ツラろう

痰(喀痰)とはなんのか?

後鼻漏は鼻水が鼻の穴ではなく口の方に垂れてきて、それが喉にへばりつきます。ですので、痰ではなく鼻水が喉の違和感や圧迫感の原因です。

では、痰とはなんなのか?

後鼻漏には直接関係がありませんが、喉に同じようにへばりつく同じようなものなので調べてみました。

なお、医学書などでは痰を喀痰(かくたん)と書くことがあります。痰と同じ意味の場合もありますし、「痰を吐き出す」「吐き出した痰」という意味もあるようです。このページでは文脈に応じて判断が付くようなら、分かりやすく書ければと思います。

また、今回も痰と咳についての専門書「咳と痰の臨床(医薬ジャーナル社)」から引用します。

痰の概要

まず始めに、痰とはどういうものなのか概要部分を引用します。

痰は気道内の過剰な吸入物質や過分泌による増加した粘液、あるいは粘液線毛クリアランスが障害されたとき、また浮腫液や膿などの異常な物質が大量にでたときにこれらを体外へ排除するための生体防御反応の1つである。

痰は主に喉頭や気道に存在する咳受容体が刺激され、その刺激が迷走神経内の知覚神経求心路に上行し延髄に達し、反射的体性神経内の遠心路を介して声帯や呼吸筋に伝達され生じる、呼吸運動反射である。

上記を簡単に書くと、痰の正体は以下のように言えそうです。

つまり、痰自体は体内からの分泌物なので、それ自体は異物ではありません。

ただ、鼻から肺までの間に以下の状態が現れた際に出た粘液の場合、痰の内部には異物が封じ込められていますから、きれいなものではありません。

  1. 異物が大量に入る
  2. 異物を吐き出す仕組みが滞る
  3. 膿などが異常にでる

こういった「異物を気道液でくるんで痰にして外に吐き出す」という流れは、後鼻漏ではおなじみの鼻水と同じですね。

アレルギー性鼻炎もそうですが、体の過剰反応の結果として分泌物の過剰分泌はよくあるパターンなのかもしれません。刺激を感知する部分が振り切れたのか、それとも分泌物を出す蛇口が締まらないほどに壊れたのか…。いずれにせよ、連鎖的な過剰反応は体に害をもたらします。

喫煙と痰

気管に異物が大量に入るという状況には、おそらく喫煙や排気ガスの吸引も含まれます。

タバコを吸って喉がイガイガして痰が出るのはこのためでしょう。逆に言えば、痰が出るから喉の異物を除去できているということです。痰が出なくなれば喉に異物が張り付きつづけ、体内に吸収されるでしょう。

タバコを吸う方は、試しに禁煙を成功させた方にお話を伺ってみるとはっきりするかもしれません。おそらくですが、禁煙成功後は痰が減りのどもイガイガも改善されているはずです。

タバコと咳に関しては以下で書いています。

痰の詳細

痰の成分として以下のように書かれています。

喀痰は気道上皮液に鼻咽頭や咽喉頭物質が加わり更に唾液、微生物、細胞、外来物質を含んでいる。その特徴は非均一で、粘弾性、粘着性の性状を融資5)、成分は水が主でその蛋白、脂質、炭水化物、電解質等で構成される。

痰の成分にはいろいろと含まれているようです。メインとなる気道液(気道上皮液と同じものの模様です)に関しては後述しますが、唾液の他に微生物や細胞を含むとはかなり複雑な内容のようです。

また、蛋白や脂質や炭水化物となるとかなり濃いというか、臭いそうな物質です。痰が気持ち悪い一因はこういった成分によるのかもしれません。特徴として粘りなどについても挙げられており、この特徴にも関わっているのでしょう。

気道液の詳細

痰にもなる「気道液」分泌量や構造についての貴重な記述もありますので引用します。

健康な気道における一日気道液生産量は10-100mLと言われる。主に粘膜下腺や杯細胞由来の粘液と気道上皮細胞由来の水分(能動的イオン輸送に伴う)からなり、さらに抹消気道のClara細胞や肺胞液(肺胞Ⅱ型細胞空のサーファクタント)、気道上皮の障害があると滲出液(アルブミンなど)などが加わる。

この気道液は気道上皮表面で2層より構成される。ゲル層-粘膜下腺や杯細胞由来の粘液と、ゾル層-線毛周囲液層で気道上皮細胞由来の水分である。

気道液自体は、上記のように1日に最大100mLはでるもののようです。喉自体がいろいろな物質が通るので、それなりに分泌していないとならないのでしょう。

成分としては粘液と水分で、そこに場所や状況によって別の成分が加わるようです。

後鼻漏と痰はやはり関係がない

ここまで読んで頂けるとお分かりになるかと思いますが、痰は気管で分泌される気道液で出来上がります。

一方、後鼻漏は鼻腔でできる鼻水が喉に垂れて起こります。

つまり、後鼻漏は痰ではなく、やはり鼻水です。

痰の成り立ちがわかれば、自分がどうのような症状なのかもさらに把握しやすくなりますね。