ツラろう

妊娠中のアレルギー性鼻炎の治療

基本は妊娠週数

妊娠中の方の場合、何らかの治療で気にするべきは何よりも胎児です。母体には問題なくとも胎児に影響があるパターンは容易に想像ができるでしょう。赤ちゃんが生まれた際の状態は、胎内にいる時の要因も大きく関わります。

ここでポイントとなるのが妊娠週数です。胎児が大きくなればそれだけ体が強くなりますから、多少は治療の幅が出るようです。

以下には、「鼻アレルギー診療ガイドライン 2013年版(改訂第7版)」を引用しつつ、妊娠5ヶ月を境にした形で記載します。

妊娠初期(妊娠15週まで)の方に対しては以下のように書かれています。

気管形成期である妊娠初期(妊娠15週まで)の妊婦に対しては催奇形性を考慮して薬物療法は極力避けるべきである。 鼻閉に対しては温熱療法、入浴、蒸しタオル、マスクなど薬物を使わない方法がある。

基本的にはやはり薬物の使用は控えるべきだそうです。 医師に診察を受けた上でのことでしたら多少は違うと思いますが、少なくとも自己判断で市販薬を服用するのはリスクが高いでしょう。

薬物を使わない方法として上げられる鼻閉対策などは、いずれも日常生活で「なんとなく楽になる」というものかと思います。 そのため、治療法とはいえ薬物ほどの効き目は見込めません。

しかし、妊娠時にはやはり胎児優先になるかと思いますので、妊婦の方には辛い思いを我慢していただく必要がありそうです。

妊娠5ヶ月以降

妊娠5ヶ月以降の方に対しては以下のように書かれています。

妊娠5ヶ月以降から分娩までは、鼻症状が日常生活に影響する場合は薬物療法を検討する。 この場合は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断されたときのみ、安全性の高い薬剤を使用する。 薬剤投与による催奇形性はこの時期には起こらないが、ほとんどすべての薬剤は胎児に移行すると考えてよく、これによる胎児の機能的発育に影響を与える可能性(胎児毒性)に配慮するべきである。

妊娠初期に比べると薬の使用が可能ではありますが、やはり慎重な検討が必要とのことです。薬剤は基本的に胎児に流れて行くという点を忘れてはなりません。

「妊娠初期をすぎたからもう安心」などというのは論外ですが、しかるべき状況であれば検討可能であることにも違いは無く、場合によっては医師に相談する方が良いでしょう。

赤ちゃんの健康は何よりも大事ではありますが、だからといって妊婦さんご自身が必要の無い、あるいは軽減出来るはずの苦しみを受け続けなければならないわけではありません。赤ちゃん同様に、妊婦さんも大事なのですから。

使用する薬

使用する薬の例として以下のような薬剤を挙げています。

妊娠5ヶ月以降で薬物の投与が必要ならばDSCG、鼻噴霧用ケミカルメディエーター遊離抑制薬、鼻噴霧用抗ヒスタミン薬、鼻噴霧用ステロイド薬などの局所用薬を少量持用いる。 点鼻用血管収縮薬の局所投与も最少量にとどめる。

薬の処方は個々の状況で変わるものです。そのため上記の内容は参考程度にとどめてください。「この薬でないとダメなの!」などと素人が医師に食ってかかっても益はありませんから。

漏も鼻閉も辛い

アレルギー性鼻炎ではない方からすれば、「妊娠しているんだから、鼻水や鼻づまりぐらい我慢しろ」という認識なのかもしれません。場合によっては「たかが」という言葉すら付く場合もあるでしょう。

しかし、鼻に関する症状は当人には非常に辛いものです。我慢などしたくありませんし、治療できるならなんでも試したいと思うほどに追いつめられる心境にもなります。

筆者は幸いにも男性ですので妊娠にまつわる大変なことがなく、その点で女性よりはかなり楽ではあります。ですが、後鼻漏や花粉症の辛さは骨身にしてみていますし、それが薬により改善できないというのがどれほど辛いことかは想像できます。

妊婦の皆さんは、さぞ辛いお気持ちかと思います…。

こうして言葉しか掛けられませんが、どうかがんばって下さい。既にがんばっているのは承知ですが、辛さを分かる人がお近くに必ずいるはずです。その点、花粉症の罹患者の数が多いことは救いになるのかもしれません。

アレルギー性鼻炎で苦しむ「今」が無理をしなければならない時であることに負けずに、元気なお子様をご出産されることを願っています。