ツラろう

花粉症と口腔アレルギー症候群(OAS)

気になる論文のテーマは「口腔アレルギー症候群(OAS)」。

筆者自身はおそらくこの症状はない(はじめて知ったので意識して診察で尋ねたことがなく、自覚症状もないので不明)ので実際の感覚はわからないのですが、内容を見ると実際はどうなのだろうとやや不安になります。

論文の書誌情報

論文に関する情報です。

概要

口腔アレルギー症候群と、混同されやすい咽頭アレルギーの違いについてが主眼の論文です。

咽頭アレルギーは花粉などで発症すること多いですが、どうやら口腔アレルギー症候群も花粉と合併することが多いらしく、そのために混同されやすいそうです。

実際には、咽頭アレルギーと花粉は直接的ですが、口腔アレルギー症候群は食物アレルギーの一種のようなもので花粉とは直接関係がない模様です。

この部分を論文より引用します。なお、OSAとは「oral allergy syndrome」の略で、「口腔アレルギー症候群」を指しています。

合併する花粉症とOASの原因食物にはある程度の関連性が知られている11,12.代表的な花粉症とOASの原因食物を表2にまとめた.

当教室で検討したシラカンバ花粉症患者のOAS原因食物は,リンゴ(21%),サクランボ(18%),モモ(17%),プラム(12%),ナシ(9%)などバラ科の食物が多く,全体の83%を占めていたが,その他にも,メロン(14%),キウイ(8%)と原因食物は多岐にわたっていた(図1).

OASを発症したシラカンバ花粉症患者のほぼ80%が2種以上の原因食物を有し,原因食物が1種類であったのは20%程度にすぎなかった13.

シラカンバは代表的な花粉症の原因植物です。主に北海道と東北において、4月から6月に花粉が飛散しているというデータもあります。

筆者の片田先生は旭川医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科の方なので、北海道の原因植物としては妥当な選択なのだと思います。

ともかく、後鼻漏と花粉症をテーマとした当サイトでは「口腔アレルギー症候群は花粉症と合併する」という部分がポイントです。

口腔アレルギー症候群(OAS)の症状

OASに関して論文冒頭で説明されていますので、引用します(改行は筆者によります)。

口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome : OAS)は1987年にAmoltら1によって報告された疾患概念であり,原因となる特定の食物を摂取すると,その直後から口唇,口腔,咽頭粘膜の腫脹,かゆみ,ヒリヒリ感などの口腔咽頭症状が出現する症候群である.

OASは特定の食物摂取が誘因となることから,食物アレルギーの一種であるといえる.

食物アレルギーは感作の成立様式の違いによってクラス1とクラス2に分類される.

クラス1食物アレルギーは原因食物が感作抗原となり,消化管で感作がおこる.

従って感作抗原と誘発抗原は同一と考えられる.

一方,クラス2食物アレルギーは,食物ではない花粉やラテックスに対する感作が成立した後で,感作抗原に対して交差反応性のある抗原分子を含んだ食物を摂取したときに発症する2.

OASはクラス2食物アレルギーの代表的な疾患であり,種々の花粉症やラテックスアレルギーに合併することがよく知られている.

概要をみると、口腔アレルギー症候群それ自体はわりと認知されている症状のようですね。花粉症との関係も以前から知られているようですし。

食物アレルギーの一種という括りは意外ですが、口の中に入るものとしては非常に当たり前のものですし、その意味では納得です。咽頭アレルギーなど食物に関わらない原因で口の中などに影響があるよりはよほど理解できますね。

花粉症とOASの合併率

論文には花粉症とOASの合併率が表になっているので、それを引用します。

ただ、この論文の表自体が「花粉症と口腔アレルギー症候群.アレルギーの臨床2012」という、この論文筆者の片田先生の本からの引用となります。

なお、引用に際して筆者がtableタグによる整形を行っています。

花粉症 OASの合併率 OASの原因食物
シラカンバ花粉症 35.5-62.3% リンゴ, サクランボ, モモ, ナシ, プラム(バラ科), キウイ(マタタビ科), メロン(ウリ科)
オオバヤシャブシ花粉症 24.7% リンゴ, モモ, ビワ(バラ科), キウイ(マタタビ科), メロン(ウリ科)
イネ科花粉症 19.6% モモ(バラ科), スイカ, メロン(ウリ科), トマト(ナス科) ,ピーナッツ(マメ科)
ヨモギ花粉症 21.4-41.0% アーモンド(バラ科), キウイ(マタタビ科), メロン(ウリ科) ,セロリ(セリ科),タマネギ(ユリ科), ミカン(ミカン科)
スギ花粉症 7.8-16.5% リンゴ, モモ(バラ科), キウイ(マタタビ科), メロン, スイカ(ウリ科), トマト(ナス科)

北海道でシラカンバ花粉症の場合、3-6割の方がOASを合併しているとようです。これはかなりの割合に思えます。

もしも、花粉症シーズンにOASを疑える症状が出て来た場合は、上記表の食べ物を控えるとよいのかもしれません。

筆者は関西圏なのでシラカンバの影響はまずないと思いますが、イネ科やヨモギやスギはありますから、それぞれの原因物質は一応注意したいと思います。

今の所腫れも痒みも感じたことはないのでおそらく大丈夫だとは思いますが、いつ発症するか分からないのがアレルギーですから、意識にとどめておくことは大事でしょう。

なお、都道府県別に花粉症の原因植物とその花粉の飛散時期をまとめたページもありますので、気になる方はごらんくださいませ。

食物の中の成分が問題

上記に食物の種類を挙げましたが、重要なのはこれらに含まれる物質がそれぞれの花粉症の中に含まれる主要抗原と類似している点です。その成分が含まれているから原因となるのであり、「食物のを避ければ良い」「食物が悪い」という意味ではありません。

論文ではシラカンバ花粉症を例に挙げて発症のプロセスを以下のように考察しています。

シラカンバ花粉症におけるリンゴのOASは,シラカンバ花粉に感作が成立した後で,共通抗原性を有するリンゴ果肉を摂取すると口腔や咽頭の粘膜でI型アレルギー反応がおこり,腫脹やかゆみなどの症状が出現すると考えられる.

まず花粉症が起こってから、同じ抗原性をもつ食物をとることでアレルギー反応が起きるという仮説です。

アレルギー性鼻炎の方にはおなじみの、体内で起こる連鎖的な過剰反応の結果と言えますね。…免疫機能は大切ですが、こうも過剰に反応されるといろいろ大変です。

結局は花粉症

後鼻漏は花粉症の後、といいますか花粉症による過剰な鼻水の分泌が原因となりますが、OASも同じように花粉症が引き金になることもあるとわかりました。

後鼻漏のよる鼻水で喉に違和感があるだけではなく、口の中に常に鼻水があるような不快な状態となりますが、OASにもかかると痒みや腫れまでがでてくることになり、不快、どころではすまなくなるでしょう。

論文中では後鼻漏との合併に関してまでは触れられていませんでしたが、すべてを合併している方がいないとは思えません。その方は大変つらい状況にいるのだと思います…。

結局、後鼻漏もOASも花粉症がなけらば発症者は減るはずで、「花粉症さえ無ければ」と思わずにはいられません。