ツラろう

後鼻漏とネブライザー療法(2013年の論文より)

ネブライザーという機器を蔓延化した副鼻腔炎症例の患者に用いた際の経過をまとめた論文です。

なお、筆者としては機器や薬剤を自己判断で購入して使用することを勧めません。医師の診断に基づく現状把握から治療に入るべきだと考えているためです。

そのためこの記事はネブライザーの購入を勧めるものではありません。

論文の書誌情報

論文に関する情報です。

ネブライザーとは

ネブライザーとは、薬剤を水蒸気のようにして鼻(口の場合もあります)から吸入させる機器です。鼻吸入器ともいうのでしょうか。耳鼻科を受診した後にそのまま備え付けのネブライザーを案内されることもあると思いますので、おなじみかもしれません。

本来な写真を掲載して「これです」と書きたいのですが、手に入らなかったため下記で代用します。形はさすがに違いますが、役割としては同じです。ただ、今回の論文では「加圧式」とありますので、下記のネブライザーとは違うと思われます。その点ご注意ください。

概要

論文では、以下のような実験をおこなったそうです。

今回,片側上顎洞炎で自然口の比較的開大している症例に対して,エアロゾル療法の有益性について検討をした。 対象としたのは抗菌薬保存的治療に抵抗を示した,片側の急性副鼻腔炎5症例である。 保存的治療3~4週後,加圧・振動型ネブライザー装置パリ・ジーヌス(パリ・ジャパン株式会社)を自宅に持ち帰らせ,1日2回ステロイド吸入液を吸入させ,治療3~4週後にその治療効果を検討した。

加圧・振動型ネブライザーの使用

加えて、ネブライザーの効果への疑問があり、そのために加圧・振動型ネブライザーを選んだそうです。

疑問とは、簡単にいえば「鼻から吸い込むだけで薬剤が副鼻腔に届くのか」ということです。人体の構造上、鼻と副鼻腔は確かにつながっているのですが、つながっていることと薬剤が届くことは別の話です。

副鼻腔自体、鼻腔に開いた横穴のようなものの先にある場所ですので、どう頑張っても意図的に鼻から入れることはできません。その意味でやむを得ないということでしょう。

論文では以下のようなデータを挙げています。

一方エアロゾル療法は古くから日常診療において,その有用性が認められているが,その適応や使用法は必ずしも確立されていない。 その理由としてははっきりしたエビデンスがなく2),適応薬剤が不十分であるなどがあげられる。 一方,副鼻腔おもに上顎洞に対するエアロゾル粒子の沈着は5μm以下と言われており,ラジオアイソトープによる検討では正常成人の副鼻腔においても到達率は7%と言われる。

エアロゾル療法というのは、霧状にした薬剤を用いる療法です。ここではネブライザーによる鼻からの吸入を指します。

上記のデータを踏まえた上で、別の論文で加圧・振動型が有効であるとあったそうで加圧・振動型ネブライザーを選択されたそうです。

結果

結果は以下の通り。

3~4週間のネブライザー療法で,後鼻漏などの症状は軽快した。

5症例すべてに改善が見られたようです。が、「軽快」という状態がよくわらないので、医師以外の人間、特に患者自身が楽になっているのかどうかは不明です。

特に後鼻漏の場合は多少の鼻漏にも敏感になりやすいため、仮に症状が軽減されても不快感がのこり「自分は治っていない」という感覚をいだいている可能性もあります。

ネブライザーは有効なのか?

ネブライザーが有効なのかどうか?

この論文を読む限りでは「有効」です。

が、仮に7%が副鼻腔に届くとして、93%は届かない訳です。加圧・振動型であっても、これが50%を超えることなどないでしょうし、なかなか難しい部分だと思います。

医師の診断をうけながらの利用は大丈夫だとは思いますが、個人の判断で利用するのは避けた方がよいです。「7%しか届かないから、回数を増やして吸入量自体を増加させよう」などと考えかねないからです。

後鼻漏の治療は他の症状や病気と同様、自己判断をできるだけ避けてください。