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子供の慢性的な咳について(3) 2008年公開のアンケート結果より

「子供の慢性的な咳について(1) 2008年公開のアンケート結果より」と「子供の慢性的な咳について(2) 小児の咳の原因」につづき、同じ「咳と痰の臨床(医薬ジャーナル社)」から引用します。この記事下部にリンクがありますので、そちらから振り返っていただくことも可能です。

咳は何かが原因ででますから、その治療は原因によってかわります。ご両親の自己判断で市販の薬を使うことが最善ではありませんので、その点に留意する必要があると思います。

病院が100%信用できるということではありませんが、素人よりは断然信用でますし、セカンドオピニオンまで含めて考えると安全性は増すはずです。

長引く子供の咳の治療

咳が長引き慢性化している子供の治療に関して、「咳と痰の臨床」では以下のように書いています。

遷延性咳嗽・慢性咳嗽の治療では、原因疾患に対する治療が基本となる。

後鼻漏もそうですが、結局咳も鼻水も何かの結果生じる(あるいは過剰に発生する)もので、治したければ元を断たねばなりません。

原因疾患に対する治療を基本とするのは非常に理にかなっています。

薬剤

原因疾患と薬剤に関しては以下の通り。

前述の小児慢性咳嗽患者58名の調査で、有効であったと思われる治療薬の検討も行ったが、原因疾患としては喘息が最も多く、以下に副鼻腔炎、下気道感染症が多かったため、治療薬剤として、気管支拡張薬、抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬、次いでマクロライド系抗薬が有効であった。胃食道逆流が疑われ、制酸薬が有効な患児も少数見られた。

当然ですが、原因疾患にあった薬が検討されています。また、ここにはかかれていませんが、当然複数の薬を併用する際の組み合わせも考慮されて居るはずです。

原因疾患が明確であればあるほど使う薬も明確で効果的になり、組み合わせも安全性が確認できている形で利用できるでしょう。

アレルギー性の炎症の関与が疑われる場合

花粉などのアレルギー性の症状は、患部に炎症を起こす場合があります。

遷延する咳嗽にアレルギー性の炎症が関与すると考えられた場合、第一に、児を取り巻く環境からアレルギーを生じさせる原因を排除することを行う。ダニやハウスダストの家庭内の塵埃だけでなく、近年のペットブームに関連した猫や犬の抗原や花粉、華美への対策も必要である。

何らかのアレルギーにかかっている方にはおなじみでうが、子供のアレルギー対策も同様でとにかく原因と成るものの排除が必要とのことです。当然と言えば当然ですね。花粉症患者が花粉まみれの場所にいて「鼻炎が治らない!」といっても当たりまえのことですし。

なお、タバコに関しての言及もあります。

タバコや線香の煙は強い刺激となるため、問診を詳細に行い、それらの刺激物も除去するべきである。

タバコの発がん性だとか体への不健康な影響だとかは置いておいても、その薬に刺激があることは間違いありません。その意味では線香が含まれている点が強く物語っています。

治療に関しては以下の通り。

近年、ロイコトリエン拮抗薬が喘息の治療を中心に用いられるようになり良い結果が得られているが、慢性咳嗽に置いても、アレルギー性の気道炎症が基礎にあると考えられる症例では、十分。期待できるものである。咳喘息と診断がつけば、喘息に準じた治療を進める。重傷例ではステロイド薬吸入による治療も行われている。

心因性咳嗽や習慣性咳嗽の場合

どうもよくわからない心因性咳嗽や習慣性咳嗽ですが、治療に関してある程度のことが書かれています。といってもかなりぼんやりですが…。具体的に書けるほど一般化されてはいない、あるいは狭義ではないのかもしれません。

心因性咳嗽や習慣性咳嗽では、心因性のストレスが主要因であるが、咳嗽に代償を求めるに至る誘因が存在するため、治療に際してカウンセリングの他、慢性咳嗽としての治療を平行して行うことがある。

いずれにしても、初診時に、診断および治療における方向付けは、確実に行う必要がある。

心因性のストレスが主要因というのはまだ分かりますが、「咳嗽に代償を求める」という部分はわかりにくいかもしれませんね。

例を挙げると、子供が親の注意を聞かずに騒いだり、親の邪魔のするようになる理由を考えてみるとよいかと思います。邪魔したり騒いだりという行為を行う理由は、親の関心を弾くためと考えられるはずです。

咳に置き換えると、ただ咳をしている訳ではなくて、咳をすることで何かを達成したいという心理的な欲求があるのでしょう。

ただでさえ心理的な問題はデリケートなものですが、相手が子供となると大人以上に注意深く対応しなければなりません。

長引く子供の咳に家族ができること

以下に重要な部分を引用します。

小児の咳嗽疾患の診療を行うにあたって、まず患児の家族から、詳しい病歴を聴取する必要がある。

いつから始まった咳嗽なのか、どのような咳嗽なのか、すなわち湿性咳嗽なのか乾性咳嗽なのか、あるいは犬吠様咳嗽などの特徴的な咳嗽なのか、また、日中の咳嗽か夜間の咳嗽かあるいは1日中続く咳嗽なのか、これまで同様の咳嗽を認める事があったのか等である。

呼吸器に関連した基礎疾患の有無を含む既往歴や家族歴、通学や通園をしている児であれば、周囲で流行している疾患の聴取等も、診療上、大いに参考になる。

平たくいえば子供や子供のいる環境に気を配り、記録を残すことが大きな力になります。

しかし、綿密な記録は大変ですし、子供の成長日記にしても困難です。毎日毎日24時間気を配ることは不可能でしょう。ですから、ともかく普段からよく見て、普段とは違う部分など変化に敏感になるべきなのだと思います。くわえて、はっきりとはしないその違和感を書き留めるのです。

現在では皆さんスマートフォンをお持ちかと思いますので、そのカレンダーにでも一言かいておいてもよいでしょう。「◯月◯日 公園で猫に触れた際に咳が長めにでた」などです。後から見返した際にこの記録が重要な意味をもつかもしれません。

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