ツラろう

痰と咳

「痰(喀痰)とはなんのか?」の記事の続きです。今回も痰と咳についての専門書「咳と痰の臨床(医薬ジャーナル社)」から引用します。

痰は喉の異物を除去するための生体防御反応ですが、痰がでるだけでは解決になりません。実際にはきださないとならず、それが咳の役目です。

この記事では、咳による痰の排出をもう少し詳しく書いてみます。

咳と痰

咳のよる排出について、以下に引用します。

咳により気道内では気体と気道液相互の運動量の転移により、2層気体-液体流出機構により気道液が排除される。

「2層気体-液体流出機構」というのがわかりにくいですが、平たく言えば「肺から吐き出す呼吸と、気道液という液体を外に出す仕組み」でよいかと思います。「流出機構」というのはそのままの意味で、「流し出す仕組み」という理解で問題ないはずですから。

以下には咳の機能や力について引用します。なお、原文はただ書き連ねてあるだけですが、そのまま引用すると読みにくいので、筆者が句点を区切りに箇条書きに変更しています。

  • 典型例では、最初の咳で59%、2番目で26%、そして3番目で15%が除去される。
  • 咳による搬送能力は、主に呼息気流速度により決められる。
  • この気流速度は気道直径や呼気筋で形成される気道圧で決定される。
  • 気流速度が>1m/sで粘液は輸送される。
  • 気道直径は気道次数と呼気時の気道の動的圧縮で決まる。
  • 気道の直径は末梢から中枢で減少する。そのため気流速度は中枢部で早く、気流輸送は中枢部で速い。

咳の強さは気道の大きさと、気流を作り出す筋肉の強さで決まるということですね。直径が狭いほどそこを流れる気流は力を増しますから、狭い中枢の方が強く、広い末端のほうが弱いというのもうなずけます。

分かりにくい方はビルの隙間で吹き荒れる風を思い浮かべてください。ビルが無い所では普通に吹いている風も、ビルとビルの間の狭い空間に押し込められると途端に風力を増します。これと同じですね。

咳による痰の排出の詳細

痰の排出に関しては更に詳しくかかれています。

努力呼気では、呼吸気流が0.1秒以内に高値になり、高い剪断速度を形成する。粘液にこの剪断力が加わると、巨大分子蛋白の再構成により一時的に粘性が減少し、輸送されやすくなる。しかし、気流速度が速いと剪断力が強く、気道液はミスト状になって、自覚的には排除されにくくなることもある。

体の中というのは時に非常に合理的にできているものだと痛感します。

つまり、痰の状態では粘りが強く簡単にはとれません。そこで、咳などで一気に高圧の気体を気管に送り込むことで痰を切ります。

しかし、ただ風で切るという意味ではなく、この気体で粘液が変化して一時的に粘りを抑えていると書かれています。つまり、痰を形成するための粘り気をこの時だけ弱めているのです。

体内で起こる連係プレーですね…。

咳と痰について

この記事に関連する記事を下記に記載します。気道液や痰の成分など説明もあります。

後鼻漏と痰は直接関係がありませんが、参考にはなると思います。