ツラろう

アレルギー性鼻炎とは(定義とアレルゲン)

ライフ・サイエンスから出版されている「鼻アレルギー診察ガイドライン 2013年版(改訂第7版)」からの引用を交えつつ、アレルギー性鼻炎について記載します。

アレルギー性鼻炎の定義

アレルギー性鼻炎(allergic rhinitis)は鼻粘膜のI型アレルギー性疾患で、原則的には発作性反復性のくしゃみ、(水溶性)鼻漏、鼻閉を3主徴とする。

I型アレルギー疾患なので、アレルギー素因(アレルギーの既往症、合併症、家族歴)をしばしばもち、血清特異的IgE抗体レベル上昇、局所肥満細胞、および局所と血液の好酸球の増加、粘膜の特異的過敏性亢進などの特徴を持つ。

簡単に書くと以下のようになると思います。

アレルギー性鼻炎発症のメカニズムや、くしゃみ,鼻水,鼻づまりに関しては別ページでさらに詳しく書いています。

アレルゲンの種類

この資料で触れられているアレルゲンの種類を箇条書きの形に直して引用します。

  • ヒョウダニ (ハウスダスト中の主要抗原)
  • 花粉 (樹木,草本,雑草類など)
  • 真菌類など

また以下のようにも書かれています。

  • アレルギー性鼻炎の病因抗原の大部分は吸入性抗原
  • 食物抗原のアレルギー性鼻炎発祥への関与は極めて低いと考えられる

つまり、アレルギー性鼻炎の原因はハウスダストと花粉が原因と言えます。真菌類は他に比べると割合はかなり小さいようです。

食べ物に対するアレルギーというのは深刻な問題ですが少なくとも鼻炎の原因となる可能性は低いようで、長引く鼻炎の原因として食べ物を警戒する必要はまずないでしょう。

花粉症

花粉症は季節や地域によってかなり異なりますが、概ね以下のような植物が原因です(出典「鼻アレルギー診療ガイドライン 2013年版(改訂第7版)」)。

木(木本)の花粉

種類 主な時期
ハンノキ属(カバノキ科)
スギ 8月以外
ヒノキ科
シラカンバ(カバノキ科) 春(北海道のみ)

草(草本)の花粉

種類 主な時期
イネ科 1月以外
ブタクサ属(キク科)
ヨモギ属(キク科)
カナムグラ(アサ科)

花粉症対策

その他参考情報

以下のページが参考になると思います。

ハウスダスト

「日本建築学会環境系論文集」のvol.75にある「日本・韓国の住宅におけるハウスダスト中DEHP濃度の測定」の論文でドイツ技術者協会の定義が書かれていたので引用します。

ドイツ技術者協会VDI 4300 Part 84)では,「室内の床や,家具,窓の表面などに堆積したホコリをハウスダストとし,空気中に漂っているホコリは浮遊粉じんとしてハウスダストとは対称的に扱っている。

ハウスダストとは変動する個体の無機物,あるいは有機物であり,自然発生物または人工物から成る。

また,室内から発生したものだけでなく,外部から進入した砂なども含まれる」と定義されている。

チリやホコリ、ダニ類や小さな昆虫などとても広い範囲の物質が原因です。特にダニ類や小さな昆虫類は繁殖するため、放っておくと死骸や糞が増え続けます。

また外から入ってくる花粉や排気ガスの粉塵なども対象になるため、窓を開けているだけで増える可能性もあります。

ハウスダスト対策

原因となるアレルゲンの経緯

再び「鼻アレルギー診察ガイドライン 2013年版(改訂第7版)」からの引用します。

ハウスダストは住環境の変化で増加したものですが、実は以下のような記述もあります。

有病率が高いとされていた副鼻腔炎は1960年頃から減少ないし軽症化が始まり、1960年代後半から逆比例するようにアレルギー性鼻炎の増加がみられるようになった。

当初の増加はハウスダスト、ダニによる通年性アレルギー性鼻炎であったが、都市部では最近は、花粉症の増加が著しい。とくにスギ花粉症の有病率の高さと症状の強さは、しばしば社会問題として取り上げられるようになった。

アレルギー性鼻炎が問題になり始めたあたりでは、実はハウスダストの方が花粉よりも大きな原因でした。その後スギ花粉が異様に増加して花粉の方が問題になってきたという流れです。

スギ花粉症の増加は、スギ花粉飛散量の増加に追うところが大きいか、戦後北海道、沖縄を除く全国の山林で広く行われた植林(中略)

その後価格の安い外国産木材の輸入が盛んになるにつれてスギ植樹林の手入れが疎かになり、1960年代後半から花粉生産能力の高い樹齢30年以上のスギ林面積が多くなり(中略)

1960年代後半からの10年間はブタクサ花粉症の時代であったが、現在ではスギ花粉症が猛威を振るっている。

1965-1975あたりの10年はブタクサの花粉が主要因でしたが、その後にスギ花粉が増加した原因は人為的な植樹とその後の放置にあります。

当時の産業から植樹は必要だったとしても、その後の手入れの放棄は明らかに人災です。

感作、発症は若年化しており、自然治癒も少ないため患者は累積し有病率増加につながっていると推測される

発症する年齢も下がる傾向が続き、放っておいても治らないためどんどん患者が増えてきた。というのが日本における花粉症アレルゲンの経緯となります。

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