ツラろう

後鼻漏治療に効くかもしれない「Balloon Sinuplasty」(2012年の論文より)

後鼻漏に使えるらしいBalloon Sinuplastyという治療法があるそうです。説明する論文があるので引用しつつ簡単に紹介します。

なお、こういう論文では大抵効果があるから書かれるのですが、誰にでも効く訳でもありません。治療を行える施設や医師(またはテクニシャン)がいるともかぎりません。

そのため医師にBalloon Sinuplastyを聞いてみてもあまり意味がないと思われるのでその点注意してください。

論文の書誌情報

概要

そもそもBalloon Sinuplastyとはなんなのか?という根本的な疑問の答えが論文冒頭に書かれていますので引用します。

本手術法は,特殊なバルーンカテーテルを用いて副鼻腔自然口を低侵襲に開大する新しい治療法で,2005年に米国でBrown CL & Bolger WE1)によって開始され,現在,世界で4万例以上に施行されている. 国内では,2009年から慈恵医大,順天堂大,関西医大で臨床治験が行われた.

どうやらアメリカで開発されてから2012年までの間に4万例以上の施行がなされているようです。

バルーンカテーテル自体が脳梗塞などの原因となる血管のつまりを改善するためにつかわれているメジャーな者のはずですし、施行する側にもなじみあるものであれば安心感がありますね。

Balloon Sinuplastyは2009年から日本の医学大学でも臨床実験が行われているようですし…。手の届く治療なのかもしれません。

Balloon Sinuplastyの治療の特長

バルーンカテーテルを使う時点で想像がつきますが、そのものズバリ、細った副鼻腔自然口をバルーンで押し広げるのです。

単純に閉じているものを風船で広げようというのは、シンプルかつ確実な方法ですね。そして、この特長がそのまま治療可能な疾患を限定します。

すなわち、バルーンで押し広げて解決できる疾患だけです。

論文では、海外におけるハイブリッドな治療(バルーン単体ではく複数を組み合わせた治療)にもすこし触れていましたが、「海外では」という枕詞が示す通り日本ではされていないようです。

適応疾患

さて、この論文には手術が適応できる疾患を挙げていますので引用します。

  1. 副鼻腔炎(単洞病変): 上顎洞,前頭洞,蝶形骨洞に限る. 篩骨前頭蜂巣のKuhn type 48)は,通常の手術器具では到達が難しいので良い適応となる
  2. 術後の自然口狭窄例良い適応: 膜性の狭窄―局麻下でも開放可能,日帰り可能困難な例: 骨性あるいは硬い瘢痕組織による狭窄
  3. 航空性副鼻腔炎
  4. 線毛運動機能障害
  5. その他の応用

5の「その他の応用」に関しては以下の通り。

  • 術後性上顎嚢胞→膜様嚢胞壁を穿破後にバルーンで拡大(最大7mmまで)
  • 自然口の骨,瘢痕組織による閉鎖例→ESSとの併用(hybrid surgery)
  • 前頭骨(frontal beak)の突出例→minitrepine を併用して逆行性の拡大

後鼻漏患の原因の一つである副鼻腔炎も含まれています。