
短い内容ですが、タバコと咳に関してです。厳密に言えば「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」と咳の関係から喫煙に触れています。
なお、「咳と痰の臨床(医薬ジャーナル社)」という2010年に発行された本からの引用を基本としていますので、それ以降に研究結果に進展があった場合には記事の内容とそぐわなくなります。この点ご注意ください。
しかしながら、調べた範囲では2010年のこの本の資料よりもより良いものが見つからなかったため、個人的には古くとも問題ない情報だと考えています。
重要な部分のため冒頭に引用します。
タバコ煙には4,000種類以上の化学物質が含まれており、どの物質が得意的な本疾患の原因となっているかについて明らかにすることは困難であるが、多くの研究から喫煙量と慢性咳嗽や肺低機能には関連性があることが確かめられており、慢性気管支炎の罹患率が喫煙量に直接比例することも報告されている。
タバコのあの煙の中には、4,000種類以上の化学物質が含まれているそうです。これは燃焼する際の中間産物的な化合物が多く無数に含まれるためのようです。
そしてこの中の何がCOPDの原因になっているのかは特定しきれていないそうです。ただ関連性が認められるのは確かで、結論としては「タバコのどの成分が原因かはわからないが、タバコの煙には咳の原因となる物質が含まれている」となります。
「原因物質を特定していないのにタバコをせめるのはどうなのか?」という向きもあるかと思いますが、そういうことではなく、タバコの煙という集団の中に原因が存在している、ということなのです。
その物質を特定して排除できればまた違いますが、特定できていないなら排除は不可能ですから、タバコの煙は有害であるという判断はやむを得ないでしょう。
古いデータですが、厚生労働省のサイトに「平成11-12年度たばこ煙の成分分析について(概要)」という情報が掲載されています。
そこに「有害物質」とされた物質の名称が挙げられていますので、それを書き出してみます。
- ニコチン
- タール
- ホルムアルデヒド(カルボニル類)
- アセトアルデヒド(カルボニル類)
- アセトン(カルボニル類)
- アクロレイン(カルボニル類)
- プロピオンアルデヒド(カルボニル類)
- クロトンアルデヒド(カルボニル類)
- MEK(カルボニル類)
- ブチルアルデヒド(カルボニル類)
- NO(窒素化合物)
- NOx(窒素化合物)
- シアン化水素
- アンモニア
- 1,3-ブタジエン
- イソプレン
- アクリロニトリル
- ベンゼン
- トルエン
- NNN(ニトロソアミン類)
- NAT(ニトロソアミン類)
- NAB(ニトロソアミン類)
- NNK(ニトロソアミン類)
時間が経過しているので、現在でも同じ物質が含まれているのかはわかりませんが、少なくとも平成11年からタバコを吸っている方であれば、そのタバコから上記の物質がでているはずです。
原因はいろいろありますが、咳というのは基本的に咳受容体が刺激されて発生します。
咳受容体にもいくつか種類があり、その中でも「C-ファイバー(C-Fiber)」と呼ばれるものは、有毒化学物物質や機械的刺激に反応します。タバコの有害物質が影響するとすると、C-ファイバーである可能性が高いかもしれません。
ともかく、タバコの物質が刺激物である以上、吸い込めば咳が出るのは当然ということです。タバコだから、ではなく、タバコの煙が有害物質を含んでいるから、です。
タバコのでなくとも、車の排気ガスでも工場の排煙でも有害であればかわりがありません。
一概にはいえませんが、咳は環境にも大きく影響を受けます。刺激物を摂取し続けるなら当然咳もでるわけですから。
「タバコを吸っていて慢性的な咳が出る」は当然です。そして、取り急ぎできることも明確で「タバコを止めて有毒物質の摂取を断つ」です。
タバコの煙の害は治療が難しいようですので、やめた所で改善しない可能性もあるでしょう。ですが、悪化は防げます。
後鼻漏もそうですが、現在の症状がどん底だと思っても次々に症状が悪化してくものです。後で振り返り「あの時はまだましだった」ということはよくあるはずです。
「タバコを吸っていて慢性的な咳が出る」という自覚がおありなら、まさに今がやめ時でしょう。私はタバコを吸いませんので、副流煙の受動喫煙という点からもお勧めしたいです。