
後鼻漏を患っている患者の数はそれなりに多いと思うのですが、実際にどれぐらいいるのかがわかりませんでした。
全体の数は依然として分からないのですが、小さな範囲でデータをとっている論文があるので紹介します。
論文に関する情報です。
この論文は、特定の地域の特定の場所でとられた後鼻漏患者のデータを掲載しています。詳細は以下に引用します。
1993年1月から1999年12月までに東京女子医科大学付属第二病院耳鼻咽喉科を初診した副鼻腔炎817症例のうち環状断CT検査を施行した394症例を対象とした、男性170例、女性224例であり、平均年齢は男性47.5±15.7歳、女性51.0±19.0歳であった。
東京の東京女子医科大学付属第二病院ところの耳鼻咽喉科でとられたデータとのことですね。副鼻腔炎は後鼻漏を引き起こす症状として日本では一番メジャーな少々ですが、この副鼻腔炎の患者さんを数えたようです。
2011年に書かれた別の論文である「後鼻漏診療のアンケート」では男女比が非常に偏っていましたが、今回は後鼻漏の患者数は女性が多めです。この事から見ても、後鼻漏を患っている患者数の男女差は正確な比率がはっきりしないと言えそうです。
また、この病院では男性は40代後半で、女性は50代前半が平均年齢のようです。立地にも寄りますのでなんともいえませんが、後鼻漏で通院する方は高齢の方の方が多いようですね。高齢の方(と幼児)は免疫系が弱くなっている可能性が高く、副鼻腔炎を発症し易いのでしょう。この意味では、高齢層が多くなる点は妥当とも言えます。
なお、少々おもしろいデータも書かれています。
罹患側は右82例、左105例および両側207例
どちらの鼻の穴が副鼻腔炎になっているかというデータですが、右に方がやや多いようです。統計的に左が罹患し易いなどということではありませんが、もしも目のように利き目というものが鼻にもあるならばおもしろいデータとなるのかもしれません。
ちなみに、両方の鼻が罹患している方は左右別々の方の2倍ほどで最多です。アレルギー性鼻炎である私からすれば右だけや左だけの鼻炎はあり得ませんから、当然という印象です。むしろ、片側だけが罹患するという状況が不思議なほどです。
この論文では詳細な数値がなくグラフ化されているだけですので、表の形で数値を引用する事ができません。ですが、多い順にならべるというようなことは可能ですので、その形で引用します。
なお1位が最も数が多く、7位が数が少ないという順序。
順位 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
1 | 51-60歳 | 51-60歳 |
2 | 61-70歳 | 61-70歳 |
3 | 41-50歳 | 41-50歳 |
4 | 21-30歳 | 71歳以上 |
5 | 31-40歳 | 20歳以下 |
6 | 71歳以上 | 21-30歳 |
7 | 20歳以下 | 31-40歳 |
順位 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
1 | 21-30歳 | 61-70歳 |
2 | 71歳以上 | 21-30歳 |
3 | 20歳以下 | 71歳以上 |
4 | 31-40歳 | 41-50歳 |
5 | 51-60歳 | 51-60歳 |
6 | 61-70歳 | 20歳以下 |
7 | 41-50歳 | 31-40歳 |
副鼻腔炎を年齢別に見ると、50歳代(60歳以下)が最大でした。全体的に高齢の方が罹患率が高いような印象です。
しかし、男性であれば71歳以上(70歳より上)が20代に次いで少なく、女性であれば20歳よりも30歳や40歳の方が少ないという結果です。ちょっと不思議な結果ですね。
後鼻漏に結果は20代(30歳以下)の患者が多いようです。この年齢は副鼻腔炎から後鼻漏を発症した可能性が高そうですから、他の年代と比べて後鼻漏になり易い要因があるのかもそれません。
花粉症など、特定の時期(スギの大量植樹など)に要因がある症状もありますから、同種のことである可能性もありますね。
なお、それぞれの男女比もだされているのですが、傾向として以下の事がグラフで示されています。
正確な数値がグラフからは分からないので詳細は把握できませんが、年齢によっては男女で2倍の差がみられます。
論文に書かれている考察を引用します。まずは年齢と後鼻漏の関係について。
高齢者の後鼻漏について
副鼻腔炎患者の主訴は、高齢者群では若年者群に比べて後鼻漏が多い。 われわれの症例でも、加齢に伴い申請後鼻漏を認める率がたかくなってくる。 しかし、10〜20歳代で後鼻漏の率が以外に高い。 このことは後鼻漏と性ホルモンとの関係が示唆され、更に検討が必要である。
やはり、若年層の後鼻漏が多いのが想定外だったようです。ここでは免疫力の減少だけではなく、性ホルモンが多少も後鼻漏の発症に影響がある可能性をかんがえているようです。
つづいて、後鼻漏が左右のどちらの鼻の穴に多いかという点について。
罹患副鼻腔と後鼻漏について
一側罹患例よりも両側罹患例の方で後鼻漏陽性率が高い。 これは産生される鼻漏の量が両側罹患例の方が一側罹患例に比べて多いためと考えられる。 単独罹患例は上顎洞以外では少ない。 そのため,有意な差は認めないが,図7から考えると,節骨洞が上顎洞よりも後鼻漏と関係している可能性が高い。 上顎洞以外の副鼻腔は自然孔が下方にあり,また人類が二足歩行を行 うことにより重力の関係で副鼻腔内において産生された鼻汁が排泄されやすい。 このような解剖学的な理由で飾骨洞と後鼻漏の関係が高い可能性が示唆される。今後単独罹患症例の数を増やして検討したい。
なかなか興味深いですね。
最初の部分で、両方の鼻の穴が副鼻腔炎になっていると後鼻漏になっている割合が高いと書かれています。
いつも片側だけという場合は後鼻漏になりにくいのかもしれません。逆に、両側に鼻炎が良く出る場合には後鼻漏になりやすいということかも言えるかもしれませんね。
以上、論文から引用した後鼻漏に関するデータでした。