
後鼻漏が引き起こす症状には、精神的なもの含めていろいろあります。
後鼻漏になると鼻水を意識的にも無意識的にも鼻水を飲み込もうとします。無意識的には唾を使ったり、意識的には水を飲んだりすることになります。
結果として呑気症のように空気がお腹にたまり、ガスで常にお腹が膨れている状態になってしまいます。
呑気症に関しては「日本歯科心身医学会雑誌 Vol. 22 No. 2 P 73-83」の「空気嚥下症 (いわゆる噛みしめ呑気症候群) と頭頸部不定愁訴に関する臨床統計的検討」という論文から引用します。
空気嚥下症は,過剰な空気嚥下を行うことによって,消化管内に多量の空気が貯留し,頻回のげっぷや腹部膨満感,排ガス異常などの症状を呈する機能的疾患で,消化器心身症の1つとされる
呑気症(噛みしめ呑気症候群)は、空気嚥下症とも呼ばれていて、消化器に症状が現れます。
完全に解明されたわけではないようですが、以下のように原因が書かれています。
大きな要因の1つとしてクレンチグ(噛みしめ)を上げ,過剰な空気嚥下を引き起こす病態を「噛みしめ呑気症候群」として提唱し,病態の解明を行ってきた.その結果から,空気嚥下の生理機構として,クレンチングにより,嚥下第1相が形成され,嚥下反射 を誘発し,唾液とともに空気嚥下が起こることを指摘した.
噛み締めることで唾を飲み込み、その際に空気が一緒に飲み込まれるということです。
呑気症は精神的なストレスによっても引き起こされる可能性が示唆されています。
また,日常的なストレスや緊張は,無意識のクレンチングを引き起こし,これらが習慣化された時,空気嚥下の増加がみられることを報告した
噛み締めによる呑気症の治療には無意識に噛み締めていることを自覚させるプロセスがありますが、その理由がここにあります。
ストレスから歯を嚙みしめてしまいやすく、その噛み締める行為を自覚して止めることで症状を軽減しようというものです。
加えて寝ている時も問題があります。
抑うつ状態やうつむき状態の姿勢によっても臼歯部の接触が起こりやすく,クレンチングが引き起こされることが示唆されている
うつ伏せになることで歯と歯が接触しやすくなる。つまり噛み締めた状態を作り出してしまいます。
これはあくまで噛み締めが起こりやすいという意味ではありますが、うつぶせにならないようにすることも重要だそうです。
自分が噛みしめ呑気症候群かどうかを判断する簡単方法があります。 確度が高いとは言えない(後述します)のですが、その方法は以下の通り。
噛み締め呑気症は文字通り歯を噛み締めます。無意識に強くです。
結果、その閉じた歯に舌が押し付けられ歯形にヘコみます。
寝ている時もひどいですが起きている時もかなり唾がでます。
ひどい時では5分もたたずに唾を吐き出さないといけませんでした。この状態になるまでに散々飲み込んでいるため、反射的な拒否反応に近い動作かもしれません。
唾には鼻水が混じっており、ずるりと鼻の奥から引きずり出すような感覚を覚える時もありました。
非常に不快でツライです。
会話しているといきなり喉の奥の食道や気管の入り口付近に蓋をされたようになり、咳払いをしないと声が出せない場合があります。
電話を10分程度することすら厳しい時がよくあります。
おそらく口や喉を動かしている間に後鼻漏の鼻水が垂れ下がり、喉を塞ぐのでしょう。
この状態になると頻繁に蓋をされるようになり、咳払い程度では改善せず、咳払いのせいで喉が腫れるのか咳自体が止まらなくなります。
対応策としては以下が考えられますが、咳が止まらなくなった時点で会話を早めに終わらせる選択肢しか選べないように思います。
客観的に見て、後鼻漏は非常に気持ちの悪い症状です。ネチャネチャとした印象はぬぐえませんし、鼻水をどうするのかと考えれば吐き出すか飲み込むかの2択でどちらも気持ちがわるいと感じられてしまいます。
もしも自分が後鼻漏だと人に行った場合、後鼻漏がわかっている人はこれらを具体的にイメージされてしまいますし、後鼻漏を知らない人には説明しなければなりません。
つまり話そうとしたらどちらに転んでもキモチ悪がられる可能性があります。
話ができたとしても、後鼻漏になったことがない人からすれば「たかが鼻水で」という感覚になりやすく、アレルギー性鼻炎の人であれば「そのぐらい自分だって似た経験をしている」と思うかもしれません。
デートや食事など、1日の一部を共有する時間はなんとかなります。
しかし同棲や結婚など生活を共にすることを思うと、心理的なハードルは一気に跳ね上がります。
結婚や同棲している段階で後鼻漏になったのであればまだなんとかなるかもしれませんが、まだ生活を共にしていない段階では双方に受け入れがたい可能性があります。
もちろん「後鼻漏患者は結婚できない」ということではまったくないのですが、後鼻漏ではない場合に比べると、いろいろと精神的に大変という部分はあるのではと思います(すくなくとも筆者が感じるハードルはかなり高いです)。
後鼻漏は他人に話しにくく理解されづらく、周囲の人を不快にさせる症状です。
そしてなにより後鼻漏患者自身を肉体的にも精神的も追い詰める症状です。
たかが鼻水でこれほど苦しまなくてはならない事実に心が折れそうになります。